8月21日(土)に開幕を迎える2021-22シーズンのセリエA(イタリア1部)。いわゆる注目の若手にラウタロ・マルティネスやキエーザ、バストーニといった既に世界的な知名度を誇る選手を紹介するのは無難すぎて面白みに欠けるかと思いましたので、個人的にブレイクの可能性を秘めた市場価値が1000万€以下の選手を中心に選出いたしました。各クラブから1名ずつを選出、計20選手の紹介となります。
インテル
マルティン・サトリアーノ(20歳)市場価値:100万€
11年ぶりのスクデットを獲得したインテル・ミラノ。連覇に向けてプレシーズンを過ごしているが、エースのルカクの移籍やサンチェスの負傷、ラウタロ・マルティネスの出場停止というストライカーの枚数が不安視されているなかで、新たな存在感を放っているのがマルティン・サトリアーノとなっている。2020年1月にウルグアイの名門ナシオナルから加入したストライカーは、与えられた時間で結果を残し続け、新指揮官のシモーネ・インザーギからも評価されるなど、ローテーションに加わる可能性も浮上した。それでも、ローン移籍の噂は絶えないため、土壇場で別のクラブに加入する可能性もあるだろう。
ミラン
ダニエル・マルディーニ(19歳)市場価値:80万€
『ACミランのマルディーニ』という言葉に馴染みがあるように、彼は祖父チェーザレ、父パオロに次ぐマルディーニ家の才能だ。昨季は離脱期間もあったがトップチームでの積極的な関与で期待値を上げており、ミラニスタが望む存在に一歩一歩近づいている。彼は祖父・父とは異なり攻撃的な選手ではあるが、マインドの部分は親子三世代に引き継がれることだろう。
アタランタ
ロベルト・ピッコリ(20歳)市場価値:300万€
デヤン・クルゼフスキ、アマド・ディアロ、エブリマ・コリーといったタレント有していたアタランタにおいて、18/19シーズンのプリマヴェーラ制覇した際にトップスコアラーとなったのがロベルト・ピッコリだ。昨季はついにスペツィアへのローンにて武者修行を積むと、193cmのリーチを武器にセリエAでは20試合で5得点を記録。その活躍によってアタランタに復帰しバックアッパーとしての地位を確立すると、ドゥバン・サパタの負傷離脱によって彼の出場機会が増えることも予想されている。
ユヴェントス
ニコロ・ファジョーリ(20歳)市場価値:120万€
王座奪還への気運が高まるユヴェントスにおいて、若手選手の多くは他クラブから買い付けた市場価値の高い選手となっている。そのため、下部組織出身選手への期待値は高く、なかでもニコロ・ファジョーリはトップチームで出場した際にも長けた判断力で安定的なパフォーマンスを見せているため、定着に最も近い存在だろう。とはいえスタメン級でプレーするには時間を要するため、ロカテッリの加入も含めるとローン移籍の可能性も否定できない。
ナポリ
アントニオ・チオフィ(18歳)市場価値:60万€
ナポリにおける最有望株はジャンルカ・ガエターノだが、開幕直前にて再びローン移籍の可能性が浮上しているため紹介は見送る。そのため、今季はプリマヴェーラ以下からの選出が必要になるため、今回はアントニオ・チオフィにピックアップすべきだろう。昨季は2021年以降からトップチームに招集され続けているアタッカーは、主将のインシーニェのバックアップを務めるまでへの成長が求められている。一方、8月17日には自身のSNSでCOVID-19に感染したことが明らかとなったため、ややスタートは出遅れることになった。
ラツィオ
ラウル・モロ(18歳)市場価値:80万€
2019年夏にスペインを離れイタリアに渡った少年は、ついにラツィオのトップチームで出場機会を得るまでの成長を遂げた。バルセロナに在籍した際には哲学に反するとされた個人技での打開は、ここでは大きな脅威として認められており、新指揮官のマウリツィオ・サッリも評価している。昨日にはローマからラツィオに36年ぶりの移籍が決まった同胞ペドロの存在もあるため、似たプロフィールを持つ彼から学べることも多くあることだろう。
ローマ
エブリマ・ダルボエ(20歳)市場価値:200万€
ASローマにおいて、昨季の終盤戦に突如注目を集めたのはエブリマ・ダルボエだ。ディフェンシブハーフまたはインサイドハーフでプレーした彼は、年齢には似つかわしくない冷静で知性を感じさせる処理能力で評価を高めており、未来のローマを担う1人としての立ち位置を確立している。そこで気になる点なのは新指揮官として就任したジョゼ・モウリーニョとの相性であり、この関係性がどちらの方向に進んでいくのかは要注目ポイントだろう。
サッスオーロ
メルト・ムルドゥル(23歳)市場価値:900万€
EURO2020では不本意な結果に終わってしまったトルコ代表だが、そんな状況でも輝いていたのがメルト・ムルドゥルだろう。オーストリア育ちの彼は、両足を違和感なく使えることから両サイドバックでの起用が可能であり、シーズンを通して重宝される可能性も高い。また、攻撃的な一面も兼ね備えている。
サンプドリア
ユリアン・シャボー(23歳)市場価値:300万€
195cmのフィジカルを持った左利きのセンターバック。エールディヴィジで一定の評価を得ていた彼は、昨季のスペツィアでさらに成長を遂げ、今季よりサンプドリアに復帰している。吉田麻也とのコンビを形成する可能性もあり、その闘志溢れたプレーで多くのものを魅了することだろう。
エラス・ヴェローナ
マッテオ・カンチェッリエリ(19歳)市場価値:10万€
ファクンド・フェレイラ(当時はシャフタール)に突き飛ばされたボールパーソンとして知られた彼は、昨季よりASローマからエラス・ヴェローナにローン移籍にて加入している。昨季はプリマヴェーラ2(U19/2部)にて18試合15得点7アシストという成績を残すと、今季はトップチームに帯同。プレシーズンでも印象的な活躍を見せており、ゴール前の最終局面で高い品質をもたらしている彼がセリエAでも通用するかに注目だ。
ジェノア
ニコロ・ロヴェッラ(19歳)市場価値:500万€
昨季の冬、ユヴェントスに1800万ユーロで買取されたジェノアの逸材は、1年半ローンの残り1年として今季を過ごすことが決まっている。次世代のレジスタとしてゲームを組み立てる能力やハードワークに定評を持っているが、現時点の市場価値は500万ユーロとその価値を証明できていない。今季はユヴェントスが費やした金額に見合ったパフォーマンスが必要になるため、注目の逸材だろう。
ボローニャ
エマニュエル・ヴィニャート(20歳)市場価値:600万€
欧州だけでなく世界中から有望な若手を獲得し続けているボローニャには、その戦略どおりに多くの有望株が控えている。ヒッキー、ウルバンスキ、スコウ・オルセンなど2~3年目となる選手にも注目すべきだが、イタリア国内という意味ではエマニュエル・ヴィニャートの存在は大きいだろう。キエーヴォによって輩出されたアタッカーは、セリエA初挑戦となった昨季にも才能を感じさせるプレーを見せており、今季はさらなる飛躍を期待できる。
ウディネーゼ
デスティニー・ウドジェ(18歳)市場価値:100万€
エラス・ヴェローナからの最新作として昨季途中から存在感を見せていた彼は、今季より買取義務付きのローン移籍にてウディネーゼに加入している。187cmとサイドバックとしては恵まれた体格が持ち味であり、そのフィジカルでボールを刈り取る動きや、強引な形での突破といったスケールの大きなプレーで市場価値を高めることが予想される。
フィオレンティーナ
ユセフ・マレー(22歳)市場価値:350万€
モロッコ系イタリア人の22歳は、そのキャリアの多くをセリエC~セリエBにて過ごしていた。それでも昨季に見せたヴェネツィアのセリエA昇格に大きく貢献したことで、保有元のフィオレンティーナに復帰、そしてトップチームに定着できるかに注目が集まっている。現時点ではカップ戦でも起用されているが、あくまでもポジションは確立されたものではないため、様々なクラブ間交渉の材料ともなるだろう。とはいえ、セリエAでプレーする資格は充分持っているため期待したい。
スペツィア
エブリマ・コリー(21歳)市場価値:400万€
18/19シーズンにプリマヴェーラを制覇したアタランタの黄金世代において、彼の汎用性は大きな武器となっていた。昨季よりエラス・ヴェローナにローン移籍した彼は、今季も同じくセリエAのスペツィアにローンで加入している。セリエAの舞台にも慣れてきた21歳は、スペツィアの左ウィングで攻撃の起爆剤となるほか、高いサッカーIQによって様々な用途を任されるだろう。その果てには友人であるムサ・バロウのような活躍も見せるのではないか。
カリアリ
アンドレア・カルボーニ(20歳)市場価値:500万€
カリアリの下部組織から生まれた新たな才能であるアンドレア・カルボーニは、187cmの身長を武器に戦う希少価値の高い左利きのセンターバックだ。昨季よりフル出場で守備を牽引する場面も多く見られた彼だが、17歳の頃にはサッカーを辞めようとしていた過去を持っている。そんな出来事がありながらもカリアリのトップチームにまで上り詰めたそのストーリーと共に、本格的にブレイクを果たすだろう。
トリノ
ウィルフリード・シンゴ(20歳)市場価値:700万€
過去2シーズンに渡って下位に低迷しているトリノにて、右サイドを支配しているのがウィルフリード・シンゴだ。記憶に新しい東京オリンピックではコートジボワールU24の中心となり、自身のミスで失点を招いたシーンもあったが、ブラジル・スペイン・ドイツといった相手にも引けを取らない活躍を見せていた。トリノでは昨季からトップチームに定着し、今季もその積極的な攻撃参加でセリエAを盛り上げるはずだ。
エンポリ
トンマーゾ・バルダンツィ(18歳)市場価値:60万€
セリエBを制した裏側でもうひとつ話題となっていたのがエンポリ・プリマヴェーラ(U19)であったことはご存知だろうか。ユヴェントスやインテルといった並み居る強豪を下し、20数年ぶりにプリマヴェーラのタイトルを手にしたチームにおいて、最も中心的な存在となっていたのがトンマーゾ・バルダンツィとなっている。170cmと小柄ながらゴール前での影響力が凄まじく、いわゆるファンタジスタとしての才能を持った彼がエンポリのトップチームで活躍する可能性も否定できない。
サレルニターナ
マッテオ・ルッジェーリ(19歳)市場価値:200万€
23年ぶりのセリエAとなるサレルニターナ。残留に向けた強力な補強が必要ではあるが、多額の投資は見込めないことからフリーやローンで選手を補強しており、降格候補筆頭になることは間違いないだろう。それでもアタランタから貸し出された左サイドバックのマッテオ・ルッジェーリは注目株であり、昨季はバックアッパーながらもトップチームに登録され、19歳となった今季はサレルニターナで多くの出場時間を得る見通しだ。
ヴェネツィア
ジャンルカ・ブシオ(19歳)市場価値:600万€
名波浩がプレーしたことでも知られるヴェネツィアFCは、20年ぶりにセリエAを戦うために若い選手の獲得に力を入れている。そんな補強策においてクラブレコードを費やし獲得したのがアメリカ代表の19歳、ジャンルカ・ブシオだ。カンザスシティで経験を積んできた若き中盤は、初の欧州参戦となるが持ち前の適応力でチームに馴染むことが期待されており、当面の目標となる残留に大きく貢献できる選手となるはずだ。