イヴァン・イリッチ

選手紹介
名前イヴァン・イリッチ(Ivan Ilić)
生年月日2001年3月17日
国籍/出身セルビアニシュ)
身長185cm
ポジションCMF
所属マンチェスター・シティ

セルビアの中盤を明るく照らすニシュの灯台

プレー動画

経歴

■2001-2016年(幼年期~レアル・ニシュ)

かつて南東ヨーロッパの半島地域に存在したユーゴスラビア共和国、現在では様々な国家に分裂した大国であるが、そんなユーゴスラビア時代のニシュ(現在はセルビアの都市)にサッカーの才能を持った兄弟が誕生した。父のスルジャンはFKラドニチュキ・ニシュのウィンガーとしてプレーしていた元サッカー選手、母のダニイェラ・イリッチはバスケットボールのユーゴスラビア代表として出場するなど、アスリートの遺伝子による才能は親譲りのものであった(ちなみに祖父のスロボダンは歌手)。兄の名前はルカ・イリッチ(1999年生)、そんな兄と足並みを揃えたキャリアを彼は歩むこととなる。

最初に所属したのはニシュの小学校「フィリップ・フィリポヴィッチ」と「ドゥシャン・ラドヴィッチ」がより組織的な方法で体育に取り組めるように設立された地域クラブ、FKフィリップ・フィリポヴィッチであり、兄ルカが先に入団していたクラブに彼も小学校に進級した7歳から所属していた。フィリップ・フィリポヴィッチは全国選手権や国際大会でも優勝を果たすような強豪クラブとして知られ、特に1992年生まれの世代ではセルビア代表歴のあるアレクサンダル・ペシッチやニコラ・ストイリコヴィッチを輩出するなど高いレベルの環境であった。

2011年、兄ルカが小学校を卒業したことでFCレアル・ニシュに加入しており、当時9歳だった彼も小学校の卒業を待たずして兄と同じクラブに見を置いている。ニシュには質の高いスクールがあることを兄弟は語っており、レアル・ニシュもデヤン・ペトコヴィッチを中心に元プロサッカー選手が指導しているため、才能を磨くにはうってつけのクラブとなっていた。

■2016-2017年(ツルヴェナ・ズヴェズダ)

兄弟の才能を嗅ぎつけたのがセルビアを代表する名門ツルヴェナ・ズヴェズダ(レッドスター・ベオグラード)であり、先に兄ルカが2014年に加入した2年後の2016年に彼も加入。同年6月に15歳ながら最初のプロ契約を締結すると、2017年4月に行われたセルビア・スーペルリーガ(セルビア1部)第28節のFKスパルタク・スボティツァ戦にてトップデビューを果たし、16歳15日でのデビューはツルヴェナ・ズヴェズダのクラブ最年少記録のほか、21世紀生まれとして初のリーグデビューを果たした選手となっている。同時期にはユースリーグ(ヴォイヴォディナ戦)において兄のルカと共演しており、意外なことに同試合が兄弟で初めて同じピッチに立った公式戦だったという。ルカも当然のように並ならぬ才能を持っているため、イヴァンがルカの世代に飛び級したなら、ルカはさらに上の年代に飛び級していることが繰り返されていたから。

■2017-2021年(マンチェスター・シティ~エラス・ヴェローナ)

2017年7月、マンチェスター・シティが兄のルカも含めて2人を獲得したことを発表。シティからのオファーを受けた当初は、彼ら自身がまだビッグクラブでプレーするようなレベルに達していないことを自覚しており時期尚早であることを考えていたが、ツルヴェナ・ズヴェズダの深刻な経営状況も重なったことで移籍が実現している。移籍金は250万ユーロずつの計500万ユーロとなり、ツルヴェナ・ズヴェズダが至急で必要としていた680万ユーロの一部として充てがわれた。

とはいえ18歳の誕生日を迎えるまではツルヴェナ・ズヴェズダに期限付き移籍という形で留まることになったため、極端に環境面が変わることはなかった。移籍が決定してからの1年半で彼がツルヴェナ・ズヴェズダのトップチームで出場した試合数はカップ戦のわずか1試合であり、シティとしては出場機会を積ませたかったため2019年1月の移籍市場にて同リーグのFKゼムンに期限付き移籍にて加入。第22節のFKラド戦から徐々にチームの中心選手になると、第28節のヴォイヴォディナ戦での初ゴールを含めた16試合で3得点1アシストの成績を途中加入ながら収めている。

18歳となり国外への移籍が可能となった2019/20シーズン。兄も所属していたシティの提携クラブであるNACブレダ(オランダ)での挑戦が始まり、本格的に兄弟で共演することになっていた。エールステ・デイヴィジ(オランダ2部)開幕節のFCドルトレヒト戦でデビューを飾ると、第3節のSCカンブールで移籍後初ゴールを奪うなどチームを牽引(公式戦では24試合4得点2アシスト)。最初の国外挑戦はまずまずの手応えを感じながら終えている。

2020/21シーズンは兄がオランダ1部のトゥウェンテの所属となっているが、彼に与えられた次なる挑戦先はイタリア・セリエA(イタリア1部)所属のエラス・ヴェローナであった。指揮官は彼と同じ名前を持ったクロアチア人のイヴァン・ユリッチであり、3-4-2-1における中盤2枚の1人としての役割を与えられ、それに応えるようにイタリアでのサッカーに適応。パス成功率はチームで3番目に優れた値(85.8%)であるなど中盤を支えながらイタリアでの初挑戦は30試合3得点の成績となった。

シーズン所属成績
2008/2011フィリップ・フィリポヴィッチ
2011/2016レアル・ニシュ
2016/2017ツルヴェナ・ズヴェズダ1試合/0得点
2017-マンチェスター・シティ
2017/2018ツルヴェナ・ズヴェズダ1試合/0得点
2018/2019FKゼムン16試合/3得点
2019/2020NACブレダ24試合/4得点
2020/2021エラス・ヴェローナ30試合/1得点

代表歴

2015年のクロアチアで開催されたトーナメントにてセルビアU14に名を連ねると、そこからは常に各世代別代表の常連選手として位置づけられている。2016年~2018年にかけてはセルビアU17としてU17欧州選手権をプレー、2019年9月には18歳でセルビアU19に招集。2021年3月にはセルビアA代表に初めて招集されるなど、セルビアU21としてプレーする兄を差し置いて先にフル代表での時間を過ごしている。

移籍の噂

マンチェスター・シティとの契約期間は2022年6月末までとなっているが、シティとしては彼を重要視していないため期限付き移籍または売却に応じることが予想されている。エラス・ヴェローナはオプションとして完全移籍での購入も可能であったが、800万~1000万ユーロの移籍金が新型コロナウイルスによる影響で実現しないだろうという見通しを地元メディアは報じている。いずれにせよシティはさらなる呼び戻しのために必要な2000万ユーロのオプションを設定しているため、どのような展開を見せるのかには注目だ。

プレースタイル

ルカが攻撃的なミッドフィールダーとしてプレーするのに対して、弟であるイヴァンは左サイドバックからキャリアを始めている。その後は現在の中盤にてコンバートされているが、当時に養ったスキルで多くのポジションをこなせるユーティリティ性を兼ね備えるようになった。スタッツにも表れているように、彼はゲームの中心にいることを好み、優れた左足のテクニックとパスセンスを活かしてチームのリズムを形成するゲームメイカーとなっている。185cmのフィジカルを有しながらもファーストコンタクトは非常にクリーンなものであり、30試合でもらったイエローカードの枚数はわずか2枚だ。兄が一人で過ごすのが好きで家に引きこもりがちな性格なのに対し、彼はお喋りが好きな外向的な性格だという。

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