クリスティアン・ヴォルパート

選手紹介
名前クリスティアン・ヴォルパート(Cristian Volpato)
生年月日2003年11月15日
国籍/出身イタリア/オーストラリアキャンパーダウン)
身長180cm
ポジションAMF
所属ASローマ

オーストラリアでの挫折からローマで開花した才能

プレー動画

経歴

■2003-2020年(幼年期~AFA)

オーストラリアの大都市シドニーの郊外に位置するキャンパーダウンに生まれた彼は、イタリアにルーツを持った家系にて育っている。祖父のセルジオ・ヴォルパートはイタリア・トレヴィーゾ県フォッサルンガの出身であり、1954年よりオーストラリアのスタンソープに移住したことで彼の物語も地球上で一番小さな大陸から始まっていた。祖父セルジオは果樹園を営むかたわらでスタンソープ・インターナショナル・クラブの選手としてもプレーし、父親のオスカル・ヴォルパートも祖父と同じくスタンソープで生まれ育ちながら、従兄弟のミルコとジョンと一緒にボールを蹴っていたという。その後、家族は果樹園を売約し、シドニーに引っ越した背景を持っている。

フットボールに関する最初の記憶は、4~5歳のときに祖父と初めてボールを蹴ったことであり、そこはイタリアからの移民によって設立された『マルコーニ・クラブ(マルコーニ・スタリオンズFC)』のグラウンドであった。このマルコーニ・クラブはクリスティアン・ヴィエリやハリー・キューエル、マーク・シュウォーツァーも所属したことで知られるなど、こうした環境もありながら育っていたと父のオスカル・ヴォルパートは回想する。

キャリアが進展したのは『アボッツフォード・ジュニアーズFC』に在籍していた頃であり、そこでシーズン25得点の活躍を見せると、ACミランがシドニーFCと連携して展開する『ACミラン・サッカースクール(シドニーFC)』に行くことを勧められたことで自身のルーツでもあるイタリア式の教育を受けるようになっていた。指導者は1980年代前半にACミランでプレーしたアンドレア・イカルディであり、2016年~2017年には直接的な指導も受けたという。また、その当時にはアタランタBCとボローニャFCのイタリア国内のクラブのトライアルにも参加していたが、年齢を理由に加入は実現していない。

シドニーFCの管轄下に置かれていた彼であったが、2018年に13歳で退団すると次なる所属先として『ウェスタン・シドニー・ワンダラーズFC(WSW)』に加入。しかし、1年後にはクラブが彼のプロとして道を考えたときに難しいと判断したことで解雇が告げられると、彼は15歳にしてオーストラリアでのキャリアが暗礁に乗り上げる事態にまで発展していた。そこから違う道での成功を目指すべく、選手の成長を手助けする『オーストララシアン・サッカーアカデミー』に相談を求め、そこで出会ったトニー・バシャが彼の救世主となっている。

トニー・バシャは過去に14歳だったミッチェル・デュークをセントラルコースト・マリナーズに送り出すまでにサポートするなど、クラブから将来が期待されていなかった少年らをプロ選手に導いた実績のある人物であり、最初のトレーニングセッションの時点で彼が才能を持っていることを見抜いていたという。そこからトニー・バシャはローマU17のヘッドコーチを務めていた友人のファブリツィオ・ピカレタに電話をかけ、その推薦から『ASローマ』での挑戦権を手に入れたのだ。

■2020-2022年(ASローマ)

ローマでのトライアルでは途中出場から15分間でハットトリックを記録した試合を機に、数日後にはオファーが届いたことで正式な加入が実現。この才能に惚れ込んだフランチェスコ・トッティは自身が代理人としてメンターになるなどローマでの環境はオーストラリアでは考えられないほど恵まれたものとなっている。

2020年1月からの加入でローマU17から始まるも、COVID-19の影響によりコンペティションが中断となったことから初年度の活動は限られていたが、U17リーグで出場した2試合ではそれぞれアシストを記録するなど即座に適応したことで2020/21シーズンはローマU18に昇格。ローマU18ではレギュラーシーズンを15試合4得点1アシストの成績で2位に終えると、2021年6月にはローマ・プリマヴェーラ(U19)でのデビューも17歳にして実現していた。同シーズンの締めくくりとなったU18リーグの優勝ラウンドでは準決勝のアタランタを相手に1得点1アシストで6-0の大勝に貢献するも、ジェノアに決勝戦で敗れたことから準優勝に終わっている。

2021/22シーズンはアルベルト・デ・ロッシが率いるプリマヴェーラ(U19)を中心にプレーし、イタリアの環境に適応したことを示すような28試合11得点4アシストの活躍でプリマヴェーラ1(U19リーグ)のレギュラーシーズンにおける首位に貢献するが、U18と同様に再び優勝ラウンドの決勝戦で敗れるなど悔しさが残るシーズンであった。一方、2021年12月にはセリエA(イタリア1部)第16節のインテル・ミラノ戦でトップデビューを達成し、3ヶ月後のデビュー2試合目となったエラス・ヴェローナ戦ではコーナーキックのこぼれ球を叩き込む初ゴールを記録し、18歳3ヶ月4日の記録は直近9年以内で最も若い記録となっている。今季(2022/23シーズン)はジョゼ・モウリーニョが流れを変えるためのオプションとして戦力に数えられているなどトップチームに定着しているところだ。

代表歴

オーストラリアとイタリアの両方を代表できる彼だが、現時点ではイタリア代表を選択する意志が固いことが確実視されている。その大きな背景には2022年11月にFIFAワールドカップのオーストラリア代表への参加を断ったことがあり、オーストラリア代表の指揮官であるグラハム・アーノルドもメンバー発表の前日午後11時まで26名に入れることを考えていたが、本人とその日だけでも3回の電話にて話した末に折れたそうだ。

それ以前にオーストラリアが日本戦で敗戦を喫した場面(ワールドカップのストレートインを逃した)をSNSに投稿するとして物議を醸したこともあり、ローマへの移籍後にオーストラリアの世代別代表に招集を受けたが諸々の理由で帯同に至っていないなど実現しないのも要因の一つだ。オーストラリアで認められなかったことに対する反発についてはトニー・バシャが否定しており、オーストラリアを愛する子供であることを語りながら可能性があることは示唆している。ただ、ワールドカップ本戦の招集を拒否する前となる2022年3月の話だ。

イタリア代表としては2022年6月にイタリアU19に招集されたことで既にアズーリのユニフォームを着用しており、そのままU20、U21と次々にデビューを果たしている。イタリア代表としてもワールドカップの出場権を逃したことで若返りを図る方針になりつつあることから彼が早々にチャンスを得ることも考えられる。

移籍の噂

ASローマとの契約期間を2026年6月末までに延長しており、代理人としてクラブのレジェンドであるフランチェスコ・トッティが支えていることから、ローマでのキャリアを形成する見通しだ。定期的な出場機会が得られる限りは退団の可能性も低いだろう。

プレースタイル

トレクァルティスタ(トップ下)としての自然な才能を持っている彼は、これまでの歩みから特異な存在感を見せている。オーストラリアで評価されなかった要因の一つであった体格面も2018年頃からの2年間で30cmも伸び、現在では180cm近く(一部では187cmの表記もあるが、おそらく180cm前後)までに到達する身体構造を手にしている。元々が機敏で小柄なテクニシャンだった少年に『闘える身体』の要素が加わったのは大きな転機であった。

巧みな左足による鮮やかなボールコントロールで包囲網を簡単にかいくぐり、機敏でリズムを崩さないドリブルセンスによる突破力、ゴール前での非凡な決定力など攻撃的な才能はローマのユースカテゴリでNo.10を着用した実力を証明している。トニー・バシャが語る彼の人物像は、毎日朝6時から練習に加えて真夜中にトレーニングセンターを使いたいと電話をしていた強い勤勉性と誠実な態度にあるそうだ。

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