名前 | アサン・ウエドラオゴ(Assan Ouédraogo) |
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生年月日 | 2006年5月9日 |
国籍/出身 | ドイツ(ミュールハイム・アン・デア・ルール) |
身長/体重 | 191cm/84kg |
ポジション | CMF/AMF |
所属 | FCシャルケ04 |
育成の名門シャルケから輩出された新たなる神童
プレー動画
経歴
彼の父親であるアラサン・ウエドラオゴは元ブルキナファソ代表として2.ブンデスリーガ(ドイツ2部)を中心に活躍した人物であり、42歳となった現在もドイツ8部にてプレーを続けているなど、現役を継続しているエネルギッシュな父の背中を見て彼は育っている。父がドイツで6年目の生活を過ごしていた際に誕生しているため、ブルキナファソにルーツを持ちつつも、ドイツ国民として彼のアイデンティティは形成されながら、ルール地方の都市であるミュールハイム・アン・デア・ルールにて育っていた。
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初期キャリアを過ごしたのは地元ミュールハイム・アン・デア・ルールで活動している『TuSウニオン09ミュールハイム』であり、5歳(2011年)から2014年までの期間を同クラブのアカデミーにて所属していた。トーナメントだけでなく、トレーニングの段階から才能は優れていたと語られており、地に足をつけた態度にて常にチームプレーヤーであったそうだ。8歳となった2014年夏より名門『FCシャルケ04』のアカデミーに加入し、マヌエル・ノイアーやユリアン・ドラクスラーらを輩出した育成組織にて才能を伸ばすことを選択している。
U13カテゴリでキャプテンマークを着用するなど順調に成長していた彼は、15歳でシャルケU17に昇格し、2021/22シーズンはB-ユニオーレン・ブンデスリーガ(U17リーグ)でのプレーを開始。リーグの開幕前に行なわれたドイツ西地区のU17カップ戦では、デビュー初戦で1G3Aと大車輪の活躍を残し、最大のライバルであるドルトムントとの決勝戦には出場していないがリーグ戦に向けて弾みをつけていた。そして開幕を迎えたU17リーグにおいては、3試合目にして1G1Aを記録したことで感覚を掴むと、その試合を含めた以降8試合で6G7Aの活躍を見せるなど、15歳という年齢も含めて彼の存在は瞬く間に周知されていった。昇格1年目ながらシャルケU17を西地区の王者へと導くだけでなく、続いて行なわれた全国王者を決める決勝トーナメントではデュッセルドルフを準決勝で破り、決勝戦となったシュトゥットガルト戦でもPK戦の末に勝者となるなど、01/02シーズンから約20年ぶりとなるU17カテゴリの制覇に大きく貢献している(シーズン最終成績は23試合9G12A)。
2022/23シーズンはU17での功績が評価されたことでシャルケU19に昇格することが決定。試合時間が90分となったA-ユニオーレン・ブンデスリーガ(U19リーグ)でも開幕節からフル出場を果たし、開幕5試合で4G1AとU19カテゴリでも彼の実力が通用することを証明していた。2022年11月にはシャルケ側から彼をプロ契約に転換できるオプションが付与された昇格契約を交わすなど順調にキャリアを進んでいたが、この契約直後から負傷に悩まされたことで、11上旬~1月上旬(約2ヶ月)、2月末~4月末(約2ヶ月)でそれぞれ離脱するなどシーズン後半は思うようにプレーはしていない。
それでもシーズン最終盤に開催されたDFBポカール・デア・ユニオーレン(U19カップ)決勝の相手となったケルン戦にて復帰を果たしており、69分からの途中出場で延長戦までもつれたハードな試合展開ながらも最後まで走り切っている。試合には敗れたがシーズン終了後には世代別代表で活躍するなど影響を感じさせることなくピッチに戻ることに成功した。このため、23/24シーズンは昨季の不完全燃焼を解消するようにシャルケU19でプレーすると想定されていたが、トーマス・レイスの指揮下で臨んだプレシーズンにて素晴らしい印象を残したことで、サポーターからも開幕節に彼を起用するよう求めるような声も挙がっていたという。
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そして迎えた2023/24シーズン。開幕節となったハンブルガーSVに挑むスターティングメンバーに17歳の彼の名前は記載されていた。当初は現地時間の20:30キックオフの試合であったことで、青少年雇用保護法により20:00以降の労働を許可するのかが焦点となっていたが、クラブ責任者が法的条項の解釈を確認しながら特別に試合に出場する権利を獲得。こうした働きかけもあり、17歳2ヶ月19日でトップデビューを果たしたことで、近年ではユリアン・ドラクスラーの記録を上回るクラブ史上2番目に若い出場記録として歴史に名を刻んでいる。このデビューだけでも快挙であったが、前半22分には見事なボールコントロールから初ゴールも奪ってしまうなど、得点記録としては当然のようにクラブ史上最年少記録を樹立している。
代表歴
自身のルーツでもあるブルキナファソを代表選択することも可能であるが、現時点では世代別代表をドイツでプレーすることを選んでいる。15歳でドイツU16に名を連ねている彼において、最も輝かしい成功を収めているのがドイツU17での活動だ。予選ラウンドでは主将としてエリートラウンド進出に貢献し、エリートラウンドは負傷により出場はしていないが、チームメイトの活躍もありドイツU17はU17欧州選手権(U17EURO)の本大会への切符を手にしていた。
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Congrats to our Germany boys, who held their nerve to beat France 5-4 in a penalty shootout in the #U17EURO final pic.twitter.com/lD4Zkxl8iH
— Germany (@DFB_Team_EN) June 2, 2023
彼にとっては復帰から間もない中で開催されたU17EUROであったが、グループリーグで強豪ポルトガルとフランスの撃破に貢献し、決勝トーナメントへ進出。準々決勝のスイス戦ではPK戦、準決勝のポーランド戦では5-3の打ち合いを制して決勝戦に進むと、グループリーグでも対峙したフランスが決勝の相手として待ち構えていた。フランス戦でも90分では決着がつかずにPK戦が行なわれると、これを決めたら優勝というプレッシャーのかかった5人目のキッカーとして冷静にゴールへと流し込んだことで念願であったU17EUROの優勝に貢献している。
移籍の噂
2022年11月に結ばれた契約によって、2024年5月に18歳となるタイミングでプロ契約に移行できる権利をシャルケは保有しており、そのタイミングで2027年6月末までのプロ契約になることが現状としては確約されている。当面の目標はドイツ2部で低迷しているシャルケの復活にあるが、財政難に陥っているシャルケとしては彼を現金化したいような意図もあるため、ドイツ紙では2024年7月に契約解除が可能な条項が設定されると報じている。
2022/23シーズンの終了直後の見立てではⅡチームに昇格させたいクラブと、怪我の影響も鑑みてU19カテゴリに留まらせたいノルベルト・エルガート(U19監督)で意見の食い違いが起きていたが、前述でも触れたようにこれらの選択肢を飛び越えてトップチームに介入しているのが現状となっている。このため、2023/24シーズンでドイツ2部での鮮烈な印象を継続するのであれば、数千万€の移籍金をシャルケにもたらすことが予想されるだろう。
プレースタイル
彼はシャルケの公式Webサイトにて191cm/84kgで表記されるようなフィジカルバランスを備えたボックス・トゥ・ボックスのミッドフィールダーだ。中盤であればポジションは柔軟にこなすことができるも、得意としているのはトップ下やインサイドハーフの位置となっている。高身長でありながらもテクニカルなボールコントロールが特徴的であり、ユースカテゴリでは相手を背負いながら足の届かない位置にボールを置いた理不尽なキープ力でチャンスメイクをする姿も多かったが、トップチームでは彼にかかる負担が軽減されたタスクのもとで洗練されたスタイルへと変化している。
カオス(混沌)な局面でも持ち前のリーチからいち早くボールに触れるだけでなく、シンプルなタッチから反転することを得意としているほか、優れたビジョンと長短を問わないパスセンスも彼を構成する強みであるため、カウンターなどの局面が切り替わるタイミングは彼の独壇場となるだろう。ピッチ中央からダイナミズムに溢れたタッチで一気にゴール前に迫れるほか、フィジカルコンタクトを嫌がらないスタイルであるため球際での強さも持っていることから、ゴールという決定的な仕事も彼はやってのけるスキルを持っている。リーチを活かしたボール奪取など守備でも献身的にプレーするため、攻守に渡って屈強な大人らを相手に対人戦を繰り広げている側面からも、現状で最も不安視されるのは怪我のリスクが高いことだろう。